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きおくのへや

Hide and lurk

ほんとつらかった



0時には既に眠りについていた私は、1時頃謎の腹痛で目を覚ました。
せっかくいい子に寝ていたのにと考える暇すらなく、左下腹部を抉られるような痛みが襲い来る。なすすべなく布団の中で全身を丸めた。
とりあえず深呼吸をするために仰向けになろうとしたが、手足を動かすと苦痛がさらに強くなる。それに耐えながら身体を大の字にした。
息をするだけでなお痛む。いま痛んでいる箇所にある臓器はなんだろう。様々な憶測が頭に浮かぶ。尿管結石は重症度によっては死ぬほど痛むらしい。これがその死ぬほどの痛みなのだろうか。それとも子宮辺りになにか起きているのだろうか?今まで世間でいわれる生理痛の辛さを味わったことがない。約十年分のそれが一気に押し寄せてきたらこのくらいになるのかもしれない。
人体のことなどよくわからない私は結局、腹痛といえば便秘か下痢だろうという安直な結論を出した。
おとなしく呼吸をしていたら痛みが少し収まった。真っ暗な中で立ち上がり、トイレへ向かう。便器に腰掛けるが特になにも出ない。それどころか布団の中にいたときより更に強く痛み出した。食道がむかむかして息を吸うことすらできないほどだったが、うずくまってなんとかやり過ごした。
トイレを出て腹を押さえながら寝室に戻ろうとした私を強烈な眩暈と耳鳴りが襲う。ただでさえ辺りは闇に包まれているというのに、視界がさらに歪み、なにも見えなくなった。平衡感覚を失い地面に倒れ込む。頭ががんがんと痛み、全身から脂汗が吹き出してきた。四つん這いになりながらなんとか寝室へ辿り着く。
こいつは駄目だ、そう確信した私はスマホを取り出した。今は夜中である。家族は寝静まっているし病院も閉まっている、そもそも歩いて外に出られそうもない。他に出来ることはない。
「下腹部 痛み 左」とかそんなことを検索したと思う。一番上に出てきたサイトを開いた。
軽度のうちに手術をしておけば、もう少し発見が早ければ――不穏な言葉に不安が募らせながら、画面をスクロールした。もちろん重病とは限らない、便秘やストレスでガスが溜まっているだけの場合もある、と書いてあった。
便秘? ストレス? 笑いそうになった。大学生の春休みにストレスなど皆無である。そして私の長所といえば、快便ぐらいのものなのだ。腸の健康さには自信がある。
やはり私は病気なのだろう。もともと家族には腹が弱いものが多いのだ、ついに私の番が回ってきたというだけだ……と腹を括りながら、ふと気付く。
そういえば、昨日も今日もお通じがない。昨日は朝早く家を出て免許センターへ行ったから、あまりそのことを気に留めていなかった。今日はさっそく車に乗って出掛けていて、トイレへ行っていなかった。
唾を飲み込んだとき一緒に腹へ入った空気が、ガスの産生を増やすらしい。ストレスがあるとその分唾を飲み込む回数が増え、それと同時に飲み込んでしまう空気の量も増えてしまうそうだ。
痛みが和らぐ体勢を探して布団の中でもがきながら、昨日今日のことを思い返してみる。満員電車、人が多い会場での学科試験、その結果を待つ緊張、長時間鮨詰めになっていたことでの不快感……どれも私が大の苦手とするものだ。今日の初運転だって、もちろんだいぶ緊張していた。
すっと腑に落ちた。ガス溜まってるわこれ。痛みは寄せたり引いたりを繰り返していて、このままでは眠れそうにない。整腸剤を飲んだら少し気が楽になった。本当は食後に飲むものだが、今はそんなことを言っていられる状態ではない。
ガスだまりで検索して出てきた体操を全部試したが、たまに腹がゴロゴロ鳴る以外の効果はなかった。おならが出ないしせめてゲップでもしようかと思い炭酸水を飲んだのは今思うと馬鹿だと思う。幸い痛みが増したりはしなかったが、もちろんゲップも出なかった。
どうせ眠れないんだし書きかけの小説の続きにでも取り掛かろうと思ったが、腹の痛みで何も浮かびやしなかった。かれこれ四時間程度、身体をグネグネ捻りながらウグウグ唸っていたら、いつのまにか寝付いていた。

そんなガスだまりのせいで寝不足です。しばらくの間は意識して過ごさないと。再発しませんように。

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